クロサワバイオリン&ギター・プラネット合同企画 ~アイリッシュの調べ~

 クロサワバイオリン&ギター・プラネット合同企画 ~アイリッシュの調べ~

今日の会はコンサートではなく、軽いレクチャーというものでした。音楽を、ましてやアイルランドの音楽を教える、などということはとてもできることではありませんが、基本的なテクニックを知った上での、自身のアイディアを語る、ということは大切かも知れません。

僕は“教える”ということが苦手です。70年代、5弦バンジョーを教えていた事もあったのですが、タブ譜がないと弾けないとか、やたらと先を急ぐ人とか、教える、ということにはなにか別な才能が必要かな、と思ったものです。根気強さも含めて。

そして、アイリッシュのギターも教えたことがありますが、これに関してはさんざんコラムにも書いています。

バッハからビル・モンロー、ビリー・ホリデイからロバートジョンソンに至るまで、あらゆる音楽を聴いて、そのうえでアイリッシュ・ミュージックを体で体験して、僕は自分のスタイルを創り上げました。

一方、フィドラーは大変です。どこの家にも転がっているような楽器。子供のころ、ふと手にして自分なりに弾いてみた、なんて言う人がアイルランドにはごろごろいます。

そして、ともすれば素晴らしいフィドラーに成長していきます。フラっと現れた酔っ払いのおじさんが素晴らしい演奏をして、またカウンターに戻って眠っていることもあります。

そんな国の音楽ですからテクニックがどうのとか言うのもおこがましい、と感じてしまいます。

希花も他人に教えたりすることは、自分自身の気持ちのなかではまだ出来るものでもない、と感じているようで、そんな簡単な事ではないということを良く知っているようです。

しかしながら、ひょんなことから再会したクロサワバイオリンお茶の水店の店長さんであります秋野氏が僕らを選んで頂いたことにはとても感謝しております。

彼は日本におけるバイオリンという観念を変えるかもしれません。クラシック音楽というものの世界は結局のところこの日本に於いて50年も60年も進歩していないと感じます。

多くの人達がクラシック畑から飛び立って様々な試みをするようですが、クラシックファンにはアピールできない、というのが現状のようです。

僕の古くからの友人であるサイモン・ラトル(ベルリン・フィル指揮者)のように広い心を持ったクラシック関係者が日本には少ないようです。

秋野氏は、フィドルという地位を日本の人々に認識して欲しい、と考えているようです。そしてその先にもっともっと大きな改革を目指しているようです。

僕らも今回だけではなく、そんな彼の思いに少しだけでも力になれれば嬉しく思います。

さて、ギター・プラネットのほうからは先日大阪のサウンドメッセでもお世話になった小山氏が登場。

ローデン・ギターを扱っているお店のマネージャーです。ローデンという北アイルランド製のこのギターは僕の中にあるアイリッシュ魂を20年の間支えてくれています。アイリッシュに興味のある人は是非ギター・プラネットを訪れてローデン・ギターを試して頂きたい。

秋野氏と小山氏は見た感じ、漫才コンビみたいなので、またお二人と仕事をしたいな、と思っております。