Mareka&Junji  陽のあたる道ライブ

週の中ころから土曜日、日曜日は大荒れの天気になる、という予想だった。そして、土曜日はみなさんご存知のように、午後からどえらい風と雨だった。

このまま日曜日まで持ち越すのかと思いきや、朝起きてみると、のどから手が出た。これは、のどかな天気の時に使う僕と省悟の造語だ。

他にもある。「なにを飲む?」「そうだな。お江戸日本橋かな」といえば紅茶だ。

陽のあたる道は、長きにわたるナターシャー・ファンの、わんさんと、どんべーさんが、世界一のコーヒーを目指して始めた喫茶店。もう1年になるのかな。

溝口のバードランドと共に、ぼくらのフェバリッツのお店だ。

いくら小さいお店といえども、セットはきっちり考えていく。今日はどんなお客さんが来てくれるんだろう、ということを考えながら。

いつもいつも来てくれるひとたちも数人いるし、もう何度も聴きに来てくれる人達もいるし、初めての人は今回はほとんどいないだろう、なんてことを考えながら、前々日あたりからやりとりを開始する。

今やりたい曲、この曲はどこにいれるべきか、毎回のように聴きに来てくれる人達は、いったいなにを好き好んで来てくれるのだろう。

同じ曲をやってもいいんだろうか。全部変えてしまった方がいいんだろうか。必ずやらなくては満足してもらえない曲があるのだろうか、ということが頭の中をかけめぐっている。

そんな中で今回はEaster Snowから入った。少し時期は外れたが、そのむかしシェーマス・タンジーのフルート・プレイにしびれ、ポール・マグラッテンの同じくフルート・プレイに感動し、大好きな曲のひとつになった曲だ。ポールは“ビギニッシュ”のメンバー。ライブを初めて観た時、まだブレンダン・ベグリーがグループのアコーディオン奏者だという認識はなかった。

とにかくこの曲はもう20年以上前から大好きな曲だが、同じく希花も大好きな曲なのでこれに決定。

2011年10月16日の下北沢ラ・カーニャでもこの曲から出ている。

次はHumours of Tullyknockbrine/Maire Breathnack/Punch in the Darkのセット。最初の曲はかなり難しいと思われる。特にAパートの運指は。2曲目はソーラスもやっていて日本のプレイヤーたちにも人気のある曲。実際はAパートBパート逆だが、ソーラスがアレンジしたものが一般的に知られるようになった。3曲目はバンジョープレイヤー、ジェリー・オコーナーの作。ルナサの演奏でよく知られる。

そして、久しぶりに朝の雨。朝起きたら雨が降っていた、という語りで始めようと思っていたが、見事に予想は外された。のどから手がでたのだ。

次はMiller of Draughin/Bold Doherty/Cook and Henのリズムチェンジセット。極最近思いついたアレンジだ。

お次はパディ・キーナンから習ったLover’s Waltz。パディはトミー・オサリバンの結婚式で聴いた曲ですごく気に入ったからと言って、僕と希花に教えてくれた。

一部の最後は、ひさしぶりに“雨に消えた音楽会”前日からの状況が、あの嵐のアサップ・コンサートに似ていたので選んだ。北山さんの詩で僕の曲だ。

そしてそのままJim Donoghue’sのセットに。

2部の始まりはCoilsfield Houseを予定していたが、つい最近タンゴを聴きに行ってすごく感動した、という話しをしておられるかたがいらっしゃったので、タンゴとはちょっと違うけど、なんだか聴いたことがあるメロディだな、と感じてもらえるかと思い、急きょLa Partidaを演奏。後で、クラシックギターを長年やっているという女性から「あれは“君の影になりたい”ですね」という指摘がありましたが、その通りです。

有名な曲ですよね。ずっと前ケヴィン・バークが弾いていたのだが、もう忘れていた。そして去年ジョセフィン・マーシュが弾いたので、突然想い出し、僕らのレパートリーにも入れ、アリちゃんとのセッションでも大活躍した曲だ。

そして、やっぱりCoilsfield House。ケヴィン・クロフォードが“In Good Company”というアルバムで素晴らしいレコーディングを残している。また、Gaeroid O‘hAllmhurainがコンサルティーナで弾いているものも魅力的だ。この人とマーティン・ヘイズとのトリオでコンサートをしたことがあるが、すばらしいコンサルティーナ奏者で、またケルト民族の歴史などを教える大学教授だ。

次はスカボロー・フェア。僕ら独自のアレンジで、途中に“Man of the House”を挿入してみたが、このように合わせる曲を見つける作業もなかなか面白い。なんでもいいわけでもない。

そして、みんなでイムジン川を唄ってみた。特に今の時勢に合わせたわけではない。歴史的な背景の、そのさなかにはいなかった希花さんにとっては、この歌がなぜみんなに歌われてヒットまでしたのかが不思議で仕方ないらしい。

ただ、メロディの美しさは突出しているもののひとつだ、という考えは僕も同じなので、やってみよう、という話がまとまった。

次はComing of Spring/The Cucooから希花のリールセットへ。

そろそろコンサートも終盤に近付き、カーター・ファミリーとナターシャー・セブンで知られる海の嵐。そのままWater is Wideを楽器演奏で。

最後はHigh Reel/Moving Cloud/High Reel 最後の曲はぞくにWild Irish Manとも呼ばれている。

そして、アンコールはPockets of Goldギタリストのダヒ・スプロールのペンになる曲だが、元々はTune for Mairead and Anna Ni Mhaonaighという長いタイトルであったが、ReeltimeというグループがThe Pockets of Goldとして演奏していたものだ。

陽のあたる道にふさわしい美しい曲で締めくくれたと思う。

今回は、フィドルとギターという最小限の編成でのコンサートであったが、いろんな楽器を使ってのコンサートもあり、またこの編成でのコンサートもあり、でいいのではないかと思う反面、バンジョーは?ハープは?という方もおられる。

難しいところだが、また別なコンサートにもきていただけたらな、とも思うし、僕らもいちばん最初にやりはじめた基本的なかたちでもたまにはいいかな、と思うし、なんといってもこのかたちはとても難しい。

たったふたつの楽器で何曲も演奏することは、自分たち自身がそれぞれの楽曲に対して揺るがぬ思いを抱いていないと平坦なものになってしまう恐れがある。

今度はブルーグラスもやりましょう。希花さんにハープも弾いてもらいましょう。コンサルティーナも。そして、歌も、かな?

わんさん、どんべーさん有難うございました。

遠く京都から駆けつけていただいた川勝さん。大感謝です。そして、なんと、初めての方も半分ほどおられて、驚きました。わんさんと、どんべーさんのお人柄が確実に輪を広げているんだな、と思わざるを得ません。

世間の風当たりが強かった日(強風のことを僕と省悟はこのように言った)に集まっていただいた全ての方々に感謝いたします。

撮影:犬飼さんのFamily Member