Mareka&Junji  大泉生活文化研究所 スペース結

アイルランドから久保田さんに相談して決めていただいた今日この日、10月5日、台風18号が徐々に近づいていた。

晴れ男としてはなんとかしたかったが、前日からニュースを見る限り、幸いにもなんとか当日の直撃は避けられそうだった。それでも雨はかなり降るようなので、だれか強烈な雨男か雨女のせいにするしかない。

果たして大泉も雨。それでも多くの人が来てくれた。テレビでは「できる限り不要な外出は避けるように」と言っていたが。こうなったら楽しんで帰ってもらわなければ“不要だった外出”になってしまう。

久保田さんの短い挨拶に続いて、Island of Woods/Coccinelleのセットでスタート。アイルランド各地のコンサートでも人気の高かったセットだ。続いてHer Golden Hair Was Hanging Down Her Back/Golden Castle。これはブレンダン・ベグリーお気に入りのホーン・パイプ・セット。どちらもミルタウン・マルベイ出身のフィドラー・コンサルティーナ奏者Junior Crehanの作と言われている。

そして、希花さんのコンサルティーナでSunday’s Well,ギター・ソロでRamble to Cashel。Cashelという地名はアイルランドに幾つかあるが、多分これはカウンティ・ティペラリーのCashelだろう、と僕は思う。

そのままMorrison’s/Drowsy Maggie/Farewell to Irelandのセット。とりわけ最初の2曲はアイリッシュ・ミュージックをやり始めた頃の人達には人気の高い曲だが、最近はほとんど演奏したことがなかった。

Drowsy Maggieは普通2パートだが、僕らは1931年のFrank O’Higginsによる3パートバージョンで演奏した。これは多くの人がジョー・クーリーの創ったバージョンと言っていたが、最近の資料によると、10歳でアコーディオンを始めた彼が生まれたのが1924年。すでに31年には3パートで録音されているので彼の創作ではない、ということ。それでもその3パート目がどこからきたのかはいまだに分からないらしい。そんなこともあるせいか、ほとんどこのバージョンは知られていない。

そして、僕らはもう一つのDrowsy Maggieを演奏。これはDonegalバージョン。Farewell to IrelandはThe Maid in the Cherryとも呼ばれる、これもよく演奏されるFarewell to Ireland又はFarewell to Erinとは違うメロディーを持った曲だ。

一部の最後は、やはりアイルランドでも人気のあったLover’s Waltzで休憩。外は相変わらずの雨。

2部は90年代よく聴いていたイギリスのグループBlowzabellaのアコーディオン奏者であるAndy Cuttingの曲。The Continental Mood/Flat Worldでスタート。最近の僕らのお気に入りのセットだ。

そして、希花さんのコンサルティーナで、いまだタイトルの分からないワルツ。ケリーの山奥でラジオから流れてくるのを聴いて覚えた曲だ。

あの時の光景は忘れることが出来ない。

目の前に広がる大草原と深い緑の山々。すぐそこに羊たちが佇み、遠くに海が見え、気持ちの良いそよ風が吹いていた。

そんな時、止めてあった、あれは多分シェーマス・ベグリーのトラックのラジオから流れていた曲だった。

すぐに希花を呼んで録音してもらったが誰が演奏しているかも分からなかった。それでも今最もお気に入りの曲のひとつになっている。

そしてそのままコーマック・ベグリー、テリー・ビンガム直伝のThe Boys of Ballysadare/Sean Sa Ceoのリール・セットへ。

バンジョーでGrandfather’s Clock, Foggy Mt.BDを経て、アイルランドで最も人気の高かった「どだればち」そして、みんなも良く知っている秋の童謡。そのままハープのソロ。

スコットランドの古い曲Through the WoodからMama’s Petへ。最後はプレスリーの有名な曲のジグ・アレンジからHumours of Tullyknockbrine/Dinky’sへ。

アンコールに今日選んだのは「雨に消えた音楽会」北山さんの作詞に僕がメロディーを付けた思い出深い曲だ。

浅間山のコンサートの前日から強烈な台風に遭遇。台風はそのままこちらに向かっていたので徐々に強まる雨、風の音を聞きながら北山さんが書いた詩に曲を付けたものだ。

そして、Jim Donoghue/Road to Cashel/Neck Berryのセットにつないで終了。

Road to Cashelは僕らも今回の旅で良くしてもらった伝説のフィドラー、チャーリー・レノンが初めて書いた曲と言われる。

来年また会えたらこのCashelとはどこのことか訊いてみよう。

僕らはこんな風にしてアイルランドでいろんな人たちと出会い、いろんな景色を見て、様々な人々の生活を経験している。

こうして久保田さんのお顔を見ていると彼もまたそのうちの一人に思えてならない。ご家族も含めて久保田家そのものがアイルランドとつながっている。

こんな僕らの旅の経験を発表できる場所を提供していただいて、ほんとうに感謝しています。

カレーライスもパスタも美味しかったです。

それに、台風にもめげず足をはこんでいただいた方々、本当にありがとうございました。