徳島県の北島町。ここで「北島トラディショナル・ナイト」として、このシリーズが始まったのは1997年、ちょうど僕が「ジョディース・ヘブン」で演奏していた頃だ。
代表の小西さんからお話を頂いたのだが、さかのぼること、2012年の5月6日、近江八幡に行ったときに、会場の西村さんから紹介していただいたことが今回につながったのだ。とても有難いことである。西村さんに感謝。
さて、初めて僕らの音楽を聴く人も多いだろうけど、これだけ長くやっているところだし、この手の音楽は充分聴きなれている人もたくさんいることだろう。
僕らはシーベッグ・シーモアーから入り、アンコールのバンクス・オブ・シュアまで、全17曲を演奏した。
CDに入っている曲は比較的少なくて申し訳なかったのだが、日々変化していくレパートリー、すでに二人で演奏する曲は軽く500を超えている。
その中で、今日のお客さんにいいだろう曲を何日も前から考える。このセット・リストなるものを作るのにはいつも苦労が絶えない。
喧嘩にもなりそうな勢いで意見を出し合うが、結局そんなに大きく変わるものでもない。
今回は小西さんからのリクエストで「フォギー・デュー」を演奏した。僕らが以前録音した「フォギー・デュー」とは別な同タイトルのもの。
元々Moorlough Shoreという古いバラッドに1916年の「イースター蜂起」を題材とした歌詞が付けられたものだ。
どちらのフォギー・デューも美しすぎるほどのメロディなので、僕らは二つをメドレーで演奏させていただいた。
そして、やはり僕らならでは、というものを残していきたいので「どだればち」と、この、フォギー・デューをミックスさせたものを歌わせていただいた。
これはアイルランドでパディ・キーナンとやり、今回もイデル・フォックスとやってきたものだ。
僕は常日頃思っていることだが、自分たちの音を創ることがとても大事で、しかしそこには膨大なトラッドに対する知識と探求心が必要なのだ。そこで初めてこういった伝承音楽を演奏する資格が得られるのではないだろうか。
ある若い人が言っていた。「アイリッシュ・ミュージックは面白いですね。次から次へと新しい曲が出てくるし、セッションも大変でしょう?」
彼にとっては伝統という観念がないようだ。
まず先人たちの音に耳を済ますような感性は持ち合わせておらず、格好良さそうな、新しいものにしか興味がないようだ。
この創生ホールに関わっている人達、小西さんをはじめ、川竹さん、田中さんたちは本当にびっくりするほどの探求心と知識を持っている。
こういう人達こそ本物だ。
創生ホールで演奏できたこと、そして皆さんに会えたことはとても嬉しかったです。
僕らも皆さんのように末永く、力強く生きていけたらいいな、と思っております。
ちょっとアイルランドみたいな雨の中、足を運んでいただいたみなさん、どうもありがとうございました。